未支給年金はいくらもらえる?1〜3ヶ月分の決まり方・請求手続き・時効5年の注意点と、投資原資への活かし方

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執筆者:金子裕二(現役大学教員・カウンセラー)
25年以上の教育・研究実績(論文60本超)に基づき、
客観的な視点で執筆しています。

親や配偶者が亡くなると、葬儀、役所への届け出、銀行口座の凍結対応と、手続きが一気に押し寄せてきます。

その慌ただしさの中で、かなりの割合の人が請求し忘れているお金があります。

未支給年金」です。

未支給年金は、年金を受け取っていた人が亡くなれば必ず発生します。

にもかかわらず、自分から請求書を出さない限り1円も振り込まれず、放っておくと5年で請求する権利そのものが消えてしまいます。

金額は決して小さくありません。亡くなったタイミングによっては、厚生年金なら40万円を超えるケースもあります。

しかもこのお金、後で詳しく書きますが相続税の対象外で、遺産分割協議も不要。受け取った人が自分の判断で100%自由に使える資金です。

この記事では、未支給年金の仕組みと受給額の決まり方、請求手続きの実務、そして「削らない投資」らしく、この一時金を投資原資としてどう考えるかまでを整理します。

2年前に父が他界しました。先日インスタグラムのショート動画で「未支給年金」についてのショート動画を見て愕然としました。

亡くなった日によって、それなりの年金が父の他界後支給されるというのです。私はさっそく年金事務所に電話予約を入れました。

実際の手続きを含め、リアルな報告を含めて公開します。

「不謹慎」と思われる方もおられるかもしれません。私の場合父が他界して3年が経過し、母の生活を支える財源となればという思いで情報を提供することにしました。

投資資金にまわすかどうかは、ご家族でよく話し合われて下さい。

1. 未支給年金とは何か?ほとんどの人が知らない実態

年金は「後払い」だから、死亡時に必ず未払い分が残る

公的年金は偶数月の15日に、前月・前々月の2ヶ月分がまとめて振り込まれる「後払い」方式です

。たとえば10月15日の振込は、8月分と9月分です。

この仕組み上、受給者が亡くなった時点で「本人がまだ受け取っていない期間の年金」が必ず存在します。これが未支給年金です。

もうひとつ押さえておきたいのは、年金は亡くなった月の分まで全額支給されるという点です。日割り計算はありません。月の1日に亡くなっても、その月の1ヶ月分がまるごと支給対象になります。

私の父の場合

父が亡くなったのは、8月3日でした。年金支給日前に銀行口座の凍結をしてしまいましたし、亡くなった直後年金停止の手続きをしました。つまり、6月分以降は支給されていなかったのです。

申請が認められると8月の年金支給日に振り込まれるはずだった、6月・7月・8月、合計3か月分の年金が振り込まれる計算になります。

父の年金額は23万円程度だったので、そこそこの額になるということです。およそ69万円!

受け取れるのは誰か?請求権者の順位

未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等内の親族です。優先順位は法律で決まっています。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹
  5. それ以外の3親等内の親族

たとえば父親が亡くなり、母親が同居していた場合は、母親(配偶者)が最優先の請求権者になります。

なぜ見落とされるのか。そして「5年」の時効

見落とされる理由は主に3つあります。

未支給年金の受給額や請求手続きと投資活用を解説する記事のアイキャッチ画像
  • 遺族年金と混同されやすい。
    「遺族年金の対象外だから、うちには関係ない」と思い込んでしまうケースが典型です。未支給年金と遺族年金は別の制度で、遺族年金がもらえない人でも未支給年金は請求できます。
  • 自動では振り込まれない。
    「未支給【年金・保険給付】請求書」を自分で提出しない限り、支給されません。
  • 死亡届を出しただけで完了した気になりやすい。
    役所はこちらから申請しないと教えてくれません。家族を見送った直後は、精神的・実務的に難しいですが、死亡届等を出す際に、「申請できる給付等はありますか?」と役所に聞くことをおススメします。
    私の場合死亡届は葬儀会社が代行してしまっていたので、聞く機会を失っていました。

そして時効は5年。これを過ぎると請求権が消滅します。「まだ大丈夫」と後回しにしているうちに、他の相続手続きに紛れて忘れてしまうのが一番怖いパターンです。

なお、細かい話ですが実益の大きいポイントをひとつ。

未支給年金は法律上「遺産」ではなく請求者固有の権利なので、相続放棄をした人でも受け取れます。借金があって相続放棄を選んだ場合でも、未支給年金の請求は別枠で可能です。

2. 未支給年金はいくらもらえる?受給額と「亡くなった日」による違い

受給額の目安

支給額は単純で、「故人の年金月額 × 未支給月数(1〜3ヶ月)」です。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均年金月額は以下の通りです。

  • 国民年金(老齢基礎年金)のみ:月額 約5万9,000円  
    → 未支給年金の目安:約5.9万円 〜 17.8万円
  • 厚生年金(会社員・公務員など。基礎年金含む):月額 約15万1,000円  
    → 未支給年金の目安:約15.1万円 〜 45.3万円

もちろん個人差はありますが、「十数万円から数十万円のまとまった一時金」と考えてよい規模です。

亡くなった月・日にちで変わる「未支給月数」

未支給月数が1〜3ヶ月分のどれになるかは、亡くなった日と直近の支給日(偶数月15日)の位置関係で決まります。

亡くなったタイミング未支給月数具体例
奇数月2ヶ月分9月20日死亡 → 8月・9月分(本来10月15日振込予定だった分)が未支給
偶数月の支給日前
(1〜14日)
3ヶ月分10月10日死亡 → 8月・9月分+10月分(死亡月)の計3ヶ月分
偶数月の支給日後
(15日以降)
1ヶ月分10月25日死亡 → 8月・9月分は15日に振込済み。10月分のみ未支給

同じ「10月に亡くなった」でも、14日と15日をまたぐだけで受給額が3倍違う。

この仕組みを知らないと、「1ヶ月分しかないだろう」と思い込んで3ヶ月分を取り損ねる、ということが起こり得ます。

注意:死亡後に振り込まれた年金は「過払い」になることがある

死亡の連絡が間に合わず、亡くなった月の翌月以降の分まで口座に振り込まれてしまった場合、その分は過払い金として国に返還するか、未支給年金と相殺する手続きが必要になります。

「振り込まれたから全部使ってよい」わけではない点だけ、頭の片隅に置いておいてください。

3. 未支給年金を請求する実務手順と必要書類

請求の3ステップ

  1. 年金の支給停止手続き(受給権者死亡届の提出)  
    死亡後、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が原則です。

    ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則この届出を省略できます。
  2. 必要書類の収集と「未支給【年金・保険給付】請求書」の記入
  3. 窓口へ提出  提出からおおむね3〜4ヶ月後に、指定口座へ振り込まれます。

提出先

  • 厚生年金・共済年金:最寄りの年金事務所、または街角の年金相談センター
  • 国民年金のみ:故人の住所地の市区町村役場の年金窓口

必要書類リスト

  1. 未支給【年金・保険給付】請求書
    年金事務所に相談予約を取りましょう。その際渡してもらえます。
  2. 亡くなった方の年金手帳または年金証書
    年金手帳はネット予約の場合必須です。電話予約であれば調べてもらえます。年金証書を紛失・廃棄した場合は、年金事務所に相談に行く際口頭で伝えれば問題ありません。
  3. 戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)※故人と請求者の続柄の証明用
  4. 死亡診断書
    亡くなった方の住民票の除票も可 ※死亡事実の確認用。死亡診断書を紛失した場合は、地域の法務局に申請すれば証明書を発行してもらえるようです。
  5. 請求者の世帯全員の住民票 ※生計同一の確認用
    3,4,5は受取人のマイナンバーカードがあれば不要。
  6. 請求者の受取口座の通帳またはキャッシュカードのコピー

戸籍謄本の取り寄せには時間がかかることがあるので、相続手続きで戸籍を集めるタイミングで、未支給年金用の分もまとめて手配しておくと二度手間になりません。

最大の関門:「生計を同じくしていた」ことの証明

未支給年金の条件で唯一つまずきやすいのが、この「生計同一」の証明です。

  • 同居していた場合(住民票の住所が同じ):住民票を出せばそれで足ります。特別な書類は不要です。
    受取人のマイナンバーカードがあれば不要です。
  • 別居していた場合(住民票の住所が異なる):介護施設への入所、単身赴任、療養などの事情で住所が分かれていても、経済的な援助や定期的な行き来があれば「生計同一」と認められます。

    介護施設に入所しても、住民票を異動しない方がよいことがあります。

別居の場合は、請求書に付属する「生計同一関係に関する申立書」に具体的な事情を書きます。

たとえば「施設入所中も生活費の一部を負担し、毎週末に面会を続けていた」といった内容です。あわせて、民生委員や施設長など第三者の署名・捺印が必要になります。

施設の長に頼む場合は、面会記録や費用負担の事実を施設側が把握しているので、話が早いことが多いです。

そういうことを考えると、未支給年金の手続きは早い方がよいと言えます。

4. 未支給年金を「投資の原資」として考える

ここからが本題です。受け取った未支給年金を、どう扱うか。

税制・相続上の特徴:手取りがほぼ満額になりやすい

未支給年金には、投資原資として見たときに大きな特徴が3つあります。

① 相続税の対象外
未支給年金は法律上「遺産(相続財産)」ではなく、請求者固有の権利として支給されます。したがって相続税はかかりません。

② 一時所得扱いで、実質非課税になるケースが多い
税務上は請求者自身の「一時所得」です。一時所得の計算は、

 (一時所得の収入合計 − 特別控除50万円)× 1/2 = 課税対象額

となるため、その年の他の一時所得(生命保険の一時金など)と合算して50万円以内なら、課税対象はゼロ。

つまり満額がそのまま手元に残ります

50万円を超える場合も、超えた分の半分だけが他の所得と合算されて課税される仕組みなので、負担は比較的軽くなります。

※50万円を超えた場合などは確定申告が必要になることがあります。

③ 遺産分割協議が不要
遺産ではないので、他の相続人と分ける必要がありません。受け取った本人(たとえばお母様)が、自分の意思で100%自由に使えるお金です。

私の母に関しては、遺族年金はすでに支給されていますので、未支給年金のみとなりますが、69万円はそれなりに大きい額だと思います。

「臨時収入」だからこそ、いっん立ち止まる

行動経済学でいうメンタル・アカウンティング(心の会計)の通り、人は臨時収入を「あぶく銭」として扱いがちです。

未支給年金は生活費として当てにしていなかったお金なので、家計を痛めずに投資へ回しやすい。これは事実です。

ただし、投資に回す前に確認したいことが2つあります。

  • 受取人の生活防衛資金は足りているか
    未支給年金の受取人は、配偶者を亡くした高齢の方であるケースが多いはずです。今後の生活費や医療・介護費の備えが薄いなら、投資より先にそちらです。
  • 受取人の運用期間はどれくらいか。
    長期の複利を狙う投資は、時間があってこそ機能します。受取人が高齢の場合、「増やす」より「取り崩しながら守る」設計のほうが合うこともあります。

このあたりを確認したうえで、余裕資金として回せると判断できるなら、次のような選択肢が候補になります。

具体的な選択肢(15万〜45万円の一時金の場合)

新NISAでの投資信託のスポット購入
成長投資枠を使い、全世界株式(いわゆるオルカン)やS&P500連動型のインデックスファンドを購入する方法です。

一括で入れるか、数ヶ月に分けて入れるかは考え方が分かれます。

理屈のうえでは一括のほうが期待値は高いものの、直後の下落に対する心理的なダメージを抑えたいなら分割にも合理性があります。

金額が数十万円規模なら、どちらを選んでも長期の結果に大差はつきにくいので、自分が続けやすいほうを選べば十分です。

日本の高配当株・高配当ETF

受取人が高齢の場合はこちらのほうが実感を持ちやすいかもしれません。

まとまった資金で高配当株やETFを買い、年金収入を補う配当というキャッシュフローを作る考え方です。値上がり益ではなく「定期的に入ってくるお金」を目的にする分、日々の値動きに一喜一憂しにくいという利点もあります。

どちらを選ぶにせよ、大事なのは「臨時収入だから雑に扱う」のではなく、「臨時収入だからこそ、家計の本体を削らずに将来へ回せる貴重な原資」と位置づけることです。まさに、削らない投資です。

まとめ

  • 未支給年金は、年金受給者が亡くなれば必ず発生するが、請求しなければ支給されず、5年で時効消滅する。
  • 受給額は「年金月額 × 1〜3ヶ月分」。亡くなった日と支給日(偶数月15日)の位置関係で月数が決まり、平均的には十数万〜45万円程度のまとまった一時金になる。
  • 別居していても、仕送りや定期的な面会があれば「生計同一関係に関する申立書」で請求できる。
  • 相続税の対象外・遺産分割不要・一時所得50万円控除という特徴から、手取りほぼ満額の自由資金になりやすい。
  • 生活防衛資金と運用期間を確認したうえで、新NISAのインデックス投資や高配当株など、家計を削らない投資原資として活かす選択肢がある。

※本記事の年金額は厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の平均値に基づく目安です。年金制度・税制は改正されることがあります。

実際の手続きは年金事務所・市区町村窓口・税務署等で最新情報をご確認ください。

また、本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

参考出典(記事末尾または該当箇所にリンク推奨)

  • 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
  • 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき(未支給年金)」
  • 国税庁「一時所得」タックスアンサー

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